前回「小手先」の話をしましたが、今回はその流れで「道具」のお話を。
例えば「ノコギリ」
ノコギリで木を切る、という時に、
慣れない人は、肘を曲げ伸ばしして手を前後に動かしますが、
上手な人は、肘から先を一体として動かします。
前者では体幹や肩を力ませて固定し、上腕の力を使って手先を動かします。
それに対して、後者ではむしろ体幹と肩を柔らかく動かすことで、身体全体を使って肘から先を動かします。
慣れない人(イメージ)
上手な人(イメージ)
腕だけと身体全体。
どちらが効率的か?
言い換えれば、
どちらが楽か?
お分かりですよね。
「道具」を「身体の機能を延長・補完する物」と捉えるならば、
「道具を使う」ことは即ち「身体を使う」ということになります。
電動工具などない時代、大工は建材となる材木をノコギリで切っていました。
膨大な量の材木を切る作業を力任せで行っていては大変です。
となると、大工にとって大事になるのは
いかに効率よく(いかに楽に)、且つ正確に美しく切るか?
ということになります。
「こうすればそんなに力を入れなくても真っ直ぐ切れる」
「それにはノコギリをこうすると使い易いかも」
そんな創意工夫や試行錯誤が日々行われていたのではないでしょうか?
このように改良を重ね、洗練されて今のかたちとなった道具。
そのかたちにはそれを使ってきた先人達の身体性が反映されています。
道具の使い方を学ぶということは、身体の使い方を学ぶことであり、
道具を上手く使えるようになるということは、取りも直さず、先人達が編み出してきた身体技法を身につけるということなのです。
大工道具や農器具、料理道具、裁縫道具など、身の回りの道具を使う時、小手先だけではなく身体全体を意識してみることで、使い勝手が変わるかもしれません。
習い事で道具の扱いを学ぶ時、「どう身体を使うのか」という視点からアプローチすることで上達や気付きが得られるかもしれません。
まずはハサミや包丁など身近なものから、こんなことを意識しながら使ってみてください。
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